定着したW11と農村のEコマース

2020年12月15日

 11月11日は、中国では「独身節」と言い、パートナーのいない人たちの祝日(といっても休みではありません)です。この祝日は伝統的なものではなく、11月11日という1が4つ並ぶ日付が、人が4人、一人で立っているように見えることから、1990年代初め頃からそう呼ばれるようになったようです。初めは、パートナーのいない人同士が集まって食事をしたりお酒を飲んだりして楽しむ、という趣旨の日でしたが、11年前の2009年に、大手のECサイトであるアリババが、「独りで家にいるならネットショッピングを楽しもう」という歌い文句でECセールを始めたことから、この日は中国人にとって、インターネットで買い物をする日になりました。この大規模なECセールは中国語で「双十一(W11)」と呼ばれ、現在では日本のニュースで取り上げられるまでになりました。
 W11の取引額は、2009年は0.5億元程度でしたが、2013年以降みるみる増加し、2020年は11日夜12時までで4982億元、日本円で実に8兆円となっています。このような取引額の増加には、全体的な所得の向上、物流の安定、インターネットの普及などの理由が挙げられます。特に、スマートフォンの普及によって農村部に住む人たちもインターネットが使えるようになったことは大きいでしょう。人口が14億人いるわけですから、その市場規模は巨大です。また、中国は電子決済が発達しているので、お金のやりとりも簡単になりました。
 農村部の人たちは、自分たちが買い手になるだけでなく、地域の特産品をECサイトで売り出すことにも積極的です。以前の記事でも触れましたが、SNS上のECショップの開設は非常に簡単なため、個人だけでなく、村を挙げて行っているところも多数あります。農村の活性化は中国の政策にも合致し、2019年以降のW11では、アリババは「農村からのライブ配信」による販売を展開するなど、国策を後押ししています。
 今年のW11は、若者の健康志向から、健康食品や健康器具、健康診断の申し込みなどが人気だったようです。「緑色食品(環境に配慮した安全な食品)」は中国の農村の最大の武器。W11からも、たくましい中国の農村の姿が垣間見えます。

 

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