北京,上海で人気急上昇 荒漠地に実ったスイカ

 ここ2,3年北京や上海など中国沿岸部の大都市で、寧夏の砂地スイカの人気が急上昇しているという。スイカの名前は“圧沙瓜(ャシャグァ…砂を制圧したスイカ”と呼ばれ、一見してとても畑とは思われない荒漠地で作られている。 ここは昼夜の寒暖の差が大きいので糖度が高く美味しい。その“圧沙瓜”の中でも沙瓜(シシャグァ…セレン入り砂スイカ)”と呼ばれるものは、健康食品として特に人気が高い。
 圧砂瓜の主産地は、銀川市の西南にある中衛市である(寧夏の区域改革によって2004年、旧中衛市と中寧県、海原県が合併し新中衛市が誕生したがここでは旧中衛市を指す)。ここは内モンゴル、甘粛省と境を接し、北部に黄河が流れる。黄河周辺は水田などの耕地が開け、豊かな田園地帯であるが、そこを少し外れると高度高原へと続く丘陵地帯である。 そこは黄河の水で灌漑した一部の土地を除いては、まばらな草しか生えない荒漠とした丘不毛の地である。平均降雨量は258mm/年、水分蒸発量は1,008mm/年なので、荒漠地は灌漑しなければ農作物を栽培することができない。
 このような荒漠化した土地に長年住んできた地元の農民が、何とかしてこの地から収入を得たいと考え出したのが“圧沙瓜”である。
 荒漠化した土地は、風が吹けばモウモウと砂が舞い上がる。少しぐらい雨が降ってもすぐに蒸発してしまう。この二つの問題を解決するために、まず丘陵地の谷間にある大きさ2~3cm、大きいものでも10cmぐらいの扁平な長方形の石を、砂地一面に厚さ約5cmほど敷き詰める。 そして石の下の土を掘ってスイカの種をまき、水分の蒸発を防ぐために薄いビニール膜で覆っておくと発芽する。これが農民が発見した砂の巻上げと水分蒸発を防ぐ栽培方法である。まさに砂を制圧したスイカである。
 また、研究の結果、ある特定の場所の石にはセレン()が含まれていて、それが雨によって地中に溶け出し、スイカの中に含まれていくこともわかった。セレンは体の中で過酸化脂質を分解する抗酸化酵素の主成分で、ガンや老化を予防する働きがあり、ガン以外の様々な病気にもその効果があるとされているミネラルである。 そこで、この石を敷き詰めた土地で実ったスイカを”沙瓜(シシャグァ…セレン入り砂スイカ)”として売り出したのである。
  これが沿岸部大都市の健康食ブームと結びついて人気が急上昇することにつながった。 中衛市は1995年から圧沙瓜の栽培面積の拡大に取り組み始めた。2003年8月の作付面積は9.7万ムー、2004年16.5万ムー(スイカ農家一人当たり収入2,580元)、2005年は30万ムー(同2,580元)、2006年は50万ムー(同3,285元)で総売上2.5億元、2007年はついに101.3万ムーに達し、総売上4.05億元を実現した。 2007年の作付面積のうち”砂瓜”は72.8万ムーで、生産高は78.6万トンであった。“圧沙瓜”栽培農家は1.46万戸(7.61万人)で、乾燥地帯のスイカ栽培農家の年平均収入は1.2万元を超えた。

“荒地は乾燥地帯の独特な資源である”という理念が実現したと中衛市の担当者は誇らしげであった。

(文責:神田)

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