BW気候区初体験

島根大学生物資源科学部・農業生産学科
一戸俊義

 平成19年度末をもって藤原勉教授が定年退職されますので、その後任として島根大学・寧夏大学国際共同研究所研究プロジェクトに加えていただくこととなりました。 平成20年3月2日から8日にかけて寧夏自治区に滞在し、研究協力者の宋乃平教授と共に退耕還林草、封山禁牧下におけるメンヨウ飼養状況の現地調査(中部乾燥帯)および周辺情報の収集をさせていただきました。
 私、中国大陸を訪れるのは今回が初めて。出国前に送信いただいた神田先生のメールを参考に、冷凍庫内での作業も可能なくらいの衣類をトランクに詰め込み、大陸に赴きました。 実は私、無双の晴れ男であることに加え、この日の調査に備えて(?)最強の断熱材ともいえる脂肪層を蓄えていたため、分厚い登山用防寒具は一度も身に纏うことなく松江に持ち帰ることとなりました。 これまでに、フィリピン、インドネシアの半乾燥地帯で実験を行った経験はありましたが、中国内陸部の乾燥の度合いは経験したことが無いほど強烈でした。年降水量250ミリ未満の過酷さよ。私は青森県出身。青森にはシビ・ガッチャギという風土病があります。 水蒸気に乏しい冷風により、皮膚(口唇を含む)、肛門粘膜から水分が失われ、潤いを失ってひび割れます。 幼少の頃、就寝前に、今は亡き母に大量の蜂蜜を口に塗りたくられて辟易したものでした。 寧夏自治区に到着後、私の皮膚からは水分が失われ、滞在中は口唇からの出血が止まりませんでした。大量のお茶を摂取しましたが、尿量の減少と尿色が増すのを認め、乾燥条件下での脊椎動物生理を体感いたしました。必ずや平成20年度の講義に反映させたいと思います。
 宋教授のアレンジはもとより、島根大学・寧夏大学国際共同研究所スタッフの皆様のご高配により、意義深い調査が可能でした。聞くところ、2008年は5年に渡る封山禁牧(寧夏自治区地方政策)の最終年で、既往の成果をとりまとめて今後に向けての政策を決定する重要な年に相当するとのこと。 この様な時期に本プロジェクトに参加できたことは畜産学を専らとする私にとって、実に幸運でした。 実のある研究成果に取り纏められる様に力を尽くそうと、現地では決意いたしました(有言不実行は私の悪い所なのですが、退路を絶つために文字にしました)。
 3月7日の夜、日付変更となるまで井口所長、谷口教授、伊藤教授と杯を交わさせていただきました。普段、交流の機会が余りもてない先生方と今回の旅行中に話す機会を持てたことが何よりでした。まさにオトナの修学旅行。大学時代の恩師から「謙虚であれ、そして旅して賢くなれる人間になれ」と言われました。大いに勉励するつもりです。
 帰国後、私の皮膚は潤いを取り戻し、ときおりあの白酒の香りを懐かしんでおります。
 

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