少ない寧夏の日本語需要。通訳採用試験と日本語学習者の悩み

 寧夏国際共同研究所の日本語通訳を採用するため、面接および筆記試験を6月19日から30日まで10日間(平日のみ)実施した。応募してきた人は合計14人。内訳は社会人7人、寧夏大学日本語学科をこの7月に卒業した7人であった。社会人7人の中には寧夏大学日本語学科を卒業した2人が含まれている。また社会人7人の職業を見ると国際旅行社(銀川市には国際旅行社が4~5社、国内旅行社は30~40社あると言われている)の日本語ガイドをしている人が5人もいる。中には53歳になる男性もいる。彼は、旅行社で長らく働いており、砂漠緑化事業の日本企業で2年間も通訳をした経験を持つベテラン社員である。理由は、寧夏では日本人の観光客が少なく、年に数回程度しか日本語を使うガイドの仕事がないから応募したという。
 一般的に旅行社の通訳・ガイドの収入は、[基本給+リベート]で成り立っているという。基本給は極めて低く(200元~500元)、仕事があるときに出るリベートの加算によって収入を確保するとのことである。年に数回程度しか来ない日本人観光客相手では生計は成り立たないのだ。それとは対照的に砂漠緑化事業などを請負う日系企業などは、銀川では考えられないような高い給料を払う。しかしこれは2~3年の短期事業である。寧夏に定着している日系企業も現地相場ではかなり高い給料を払っているがこれも採用は限られている。
 その上、外国語は使えば使うほどうまくなるが、使わないとすぐに錆付いてしまう。従って、日本語を勉強した人は、一定の収入が確保され、日本語が使える職業を常に探しているのである。応募の理由はほとんどそうである。
 日系の企業も今のところ4社しかない。日本語市場の需要と供給のバランスは、ここ寧夏では完全に崩れている。
 肝心の日本語のレベルはどうか。残念ながら、日本語をあまり使うことがないだけに高いとは言い難い。かつては、きっと相当うまく話せたり、書けたりしたであろうにと思うと惜しいことである。
 長い時間と金をかけ、苦労して身に着けた日本語にこだわりつづけ、それを生かして生活の安定を図りたいという真剣な姿を見ると複雑な思いが胸中をよぎる。

 (2006年7月30日 文責:神田)

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