銀川市の廃車解体工場

一橋大学大学院 平岩 幸弘

 私は学外者として「島根大学・寧夏大学交流20周年記念シンポジウム」に参加させていただいた。シンポジウムや宴会の席を通じて、20年という交流の歳月が醸し出す親交の深さと研究活動の充実ぶりを垣間見ることができ、両校がまさに「志同道合」の関係であることを感じた。 両校の関係者の方々に、心より尊敬と感謝の念を捧げたい。

 さて、私は自動車のリサイクルを研究している関係から、シンポジウム後の10月15日に銀川市の廃車解体工場を訪問してきた。訪問した工場は、敷地が舗装されておらず廃油や廃液で黒ずんだ場所があり、屋根も無く、いたるところに解体屑が散乱していた。 重機や専用機器もなく、とにかくシンプルな器具で、手作業で解体していくという労働集約的な作業現場であった。お世辞にも環境配慮や従業員の安全対策が行き届いているとは言えない状況である。とはいえ、管見の限り、これは中国のごく一般的な廃車解体工場の姿といえよう。 日本でいえば1960~70年代の様子に近い。銀川の工場が特段に汚染的というわけではない。ただ、他の地域と若干違う点もあった。中国では、廃車を高額で違法業者に引き取ってもらったり、違法な中古部品や再組立車が闇市場で流通しているという 問題がある。その点について銀川の状況を尋ねたところ、
 「銀川では、そういった廃車などの違法取引は(ほとんど)無いです。」
との答えが返ってきた。 もちろん、沿岸部などの大都市に比べると、自動車の保有台数が少ないとか、経済発展やモータリゼーションが遅れているとか、様々な理由が考えられるのだが、それに加えて、どうやら寧夏の人々の“気質”も大きく影響しているらしい。
 「寧夏などの西部地域の人々は、全体的に素直で純朴なんです。法律はちゃんと守るし、あまり違法な行為はしませんよ。」 と説明してくれた。
 「それに、他の地域に比べると“商売”がそれほど上手じゃないんです(笑)。」
この取材を通じて、寧夏の人々についての理解が少し深まったような気がした。

 帰国前日、共同研究所の方々に連れられて、寧夏大学近くの屋台村へ行った。その時に食べた羊肉の串焼きと、帰り道に見上げた賀蘭山脈に輝く三日月が忘れられない。 次回こそは羊肉のしゃぶしゃぶを食べようと密かに決意している。

ページのトップへ戻る