多い留学希望者、遠い留学への道

 12月9日、北京大学、復旦大学、日本の京都大学、慶應義塾大学など、両国の有名大学27校が、上海で「中日大学学長フォーラム・学術研究討論会」を開催し、「中日両国の青年学生と専門家・学者の交流と協力を強める」共同提案を発表したと人民日報日本語版は伝えている。そこでは、留学生を積極的に受け入れることも申し合わされている。
 06年6月2日付けの「チャイナネット」は、国連の統計機構が発表した「2006年世界教育レポート」の記事を紹介している。UNESCOの最新データによると、中国は国外の大学で勉強している人の数が世界で最も多い国であり、中国人留学生数は世界総数の14%を占めている。 世界最大の留学生送出国である中国の留学生のほとんどはアメリカ、日本、イギリスに集中している。
 中国の教育部の発表によると、2005年に出国した留学生は、国費留学3,979人、勤務先からの公費派遣8,078人、自費留学106,500人で合計118,500人である。
 11月30日発の新華社報が伝える在中国日本大使館新聞文化センターの発表によると、2003年現在中国国内で日本語を学習している中国人は約39万人、2005年、日本語能力試験に参加した中国人は約145,270人で世界のトップである。
 いま中国では空前の大学進学ブームだが、大学不足で入学できない若者が大勢いる。また卒業しても有利な就職先が見つからない若者もまた大勢いる。 こうした背景もあって、多くの中国の若者が留学への道に夢を託して挑戦しようとしているである。
 寧夏でも事情は同じで、寧夏大学日本語学科の学生の半数以上は日本への留学を希望しており、その他の学科の学生にも日本への留学希望者がかなりいると言われている。 しかし現実には、留学への道は遠い。まず、どうすれば留学できるのかその道筋さえ分からない。留学したいけどどうすれば留学が可能ですかと聞いてくる学生は多い。
 ここ数年、島根大学には寧夏大学から何人かの留学生が来ている。彼らは、島根県民交流団の活動に参加して、たまたま保証人を引き受けてくれる人を見つけ、その人や既に留学している留学生の努力で、たまたま指導教官を見つけやっと留学にこぎ着けている。 島根大学に留学できた人はたまたまの偶然を掴まえた運に恵まれた人である。
 研究所では、日本語学科以外の学生の留学への道を切り開くための一つの方策として、「日本語教室」の開設を申し入れているが、寧夏大学側は賛同しつつも、留学への道筋、授業料や奨学金、生活面等での支援など具体的な計画を明らかにし、説明会などを開かないと学生は集まらないであろうと言っている。 事実、共同研究所の中国側のホームページには、9月から,研究所の日本人スタッフが、留学希望者に日本語を教えることを告知しているが、いまのところ問い合わせはない。 もっともどれだけこの記事を読んでいるか大いに疑問ではあるが。いずれにしても留学生対策の具体化を急ぐ必要があると思う。
 優秀な中国の学生を受け入れることは、今後の学生不足を埋めるというような短絡的な問題ではなく、21世紀を担う若者の相互理解や学問研究のネットワーク作り、東アジアの平和的な発展など日中双方の長期的な利益につながる極めて重要な問題である。

(2006年12月24日 文責:神田)

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