吹き抜ける砂嵐


 近くの工事現場から巻き上がる砂
 世界各地から異常気象のニュースが入って来るが、今年の寧夏も少し異常だと地元の人は言う。6月に4回も砂嵐があったこともその一つである。
 日本でも、毎年春先になると黄砂が飛来してきてすっかり春の風物詩になっているが、あの黄砂はきっと寧夏あたりからやってくるのではと考えている人も多いかもしれない。黄砂の発生源は、新彊維吾尓(シンキョウウイグル)自治区のタクラマカン砂漠や内モンゴル自治区のゴビ砂漠などが有名であるが、寧夏回族自治区が属している黄土高原もその一つである。

 寧夏では、一般的に3月から4月が風の季節、砂の季節で、5月になるとその発生回数は減少し、6月にはほとんどないと言われて来ている。ところが今年は4回も砂嵐があったのである。
 この砂嵐のことを中国では沙塵暴(シャチェンボォ)と言う。私たちは、寧夏研究所の事務室からこの沙塵暴を目撃することができた。その証拠が添付した写真である。
 予兆は風である。事務室の窓を開けていると、突然、風が、最初はそよそよと、そしてすぐかなり強い風に変わる。アレッと思って外を見ると2~3km先(たぶん)が霞んでいる。明らかに砂嵐と分かる。計ったわけではないがたぶん5~6分もすると事務所付近も砂塵交じりの風に変わり、見る見るうちにその濃度を濃くしていく。
 風の勢いはますます強くなり、外を見ると近くの工事現場の砂を巻き上げて行くのが良く分かる。視界はますます悪くなり、写真を写した日は確実に1km以下に見えた。風速もどれぐらいかわからないが、翌日、大学構内の太さ10㎝くらいの木が2,3本、樹高2メートルぐらいのところから折れたと聞いた。
 沙塵暴は大体30分くらいで吹き抜けていった。

 岩坂泰信『黄砂…そのなぞを追う』(2006.3 紀伊国屋書店)によれば沙塵暴もその強さによってランク分けされる。沙塵暴(視程1km以下)、強沙塵暴(視程500m以下で瞬間風速17.2/秒以上)、極強沙塵暴(視程50m以下で瞬間風速24.5m以上)である。
 我々が目撃したものが、どのランクに相当するのか、どのように観測されえたのかは確かめていない。きっと強沙塵暴ではないかと私は想像している。
 ささやかではあったが黄砂発生源での砂嵐の体験であった。このような砂嵐が頻繁に発生するという3月、4月はいったいどういう情況なのだろうか。

(2006年7月28日 写真:井口、文責:神田)

 研究所の窓から見た砂嵐の景色

 研究所の窓から見た砂嵐後の景色

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